「伝える」「彩る」「守る」技術で、
地域とともに未来へ
食品や医薬品のパッケージ、自動車や家電に使われるプラスチック部材、防災や農業に関わる資材。身近な暮らしや産業のさまざまな場面で、東京インキの技術が活かされています。
1923年創立の同社は、印刷インキで培った技術を応用し、事業の幅を広げてきました。王子に本社を置く同社のものづくりの強み、北区での地域活動、環境負荷の低減と今後の成長に向けた挑戦について、企画管理部広報課に書面でご回答いただきました。
今回ご回答いただいた方
東京インキ株式会社
佐藤 美穂 様
東京インキ株式会社 管理部門 企画管理部広報課 課長
本記事では、広報課にて全設問を取りまとめ、事業の強みや北区との関わり、今後の展望について書面でご回答いただきました。
色と素材の技術で、暮らしと産業を支える
まず、東京インキ株式会社様の事業内容と強みについてご紹介ください。日常生活の中で目にする身近な製品や用途があれば、あわせてお聞かせください。
東京インキは、1923年に創立した色彩と素材の技術を強みとするメーカーです。社名からは印刷インキの会社という印象を持たれることもありますが、現在はインキ事業、化成品事業、加工品事業を中心に、印刷関連製品からプラスチック用着色剤・機能性材料、包装・工業・農業・土木資材まで幅広く展開しています。
私たちの強みは、創業以来培ってきた顔料分散、配合設計、混練、成形加工、評価・分析などの基盤技術を、時代やお客様の課題に合わせて応用してきた点にあります。日常生活では、食品や医薬品などのパッケージ、書籍・情報誌・チラシ、自動車や家電などに使われるプラスチック部材、農業・水処理・防災関連資材など、最終製品の中や身近な場所で当社の技術が活かされています。
BtoB企業であるため社名が表に出る機会は多くありませんが、「伝える」「彩る」「守る」技術で暮らしと産業を支えています。
100年以上にわたる歴史の中で、現在の東京インキ様につながる印象的な転機や出来事を教えてください。また、時代が変わっても大切にしている価値観や姿勢は何でしょうか。
現在の東京インキにつながる大きな転機の一つは、印刷インキで培った技術を応用し、合成樹脂着色剤やプラスチック成形加工の分野へ事業領域を広げてきたことです。1923年の創立以降、印刷インキの製造・販売を起点に事業を展開し、戦後のプラスチック需要の高まりを背景に、合成樹脂用の着色剤やマスターバッチの開発へとつなげてきました。さらに、プラスチック成形加工事業へ進出したことで、現在の化成品事業・加工品事業の基盤が形成されました。
2023年12月には創立100周年を迎え、当社グループのパーパスとして『「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する』を掲げました。時代が変化しても、お客様や社会の課題を的確に捉え、ものづくりを通じて価値を提供し続ける姿勢、そして品質・信頼・挑戦を大切にする姿勢は変わらない価値観です。
東京インキ様が掲げる「伝える・彩る・守る」を体現する代表的な製品・技術・取り組みを一つ挙げ、その背景、開発・実現までの課題、社会やお客様へ生み出している価値を教えてください。
当社のパーパスである「伝える・彩る・守る」は、特定の製品だけではなく、事業全体を通じて体現されています。
創業以来の祖業であるインキ事業は、情報や想いを人から人へ「伝える」役割を担ってきました。また、化成品事業では、プラスチック製品に色や機能を付加することで、人々の暮らしを「彩る」価値を提供しています。さらに、加工品事業では、防災・減災や農業、環境分野など、人々の生活や社会インフラを「守る」製品を展開しています。
当社は創業から100年以上にわたり、顔料分散や配合設計などの基盤技術を磨き続けてきました。時代の変化とともに市場やお客様の課題も変化してきましたが、その技術を応用しながら事業領域を拡大し、「伝える」「彩る」「守る」という価値をさまざまな形で社会へ提供してきたことが東京インキの特徴です。
目立つ製品をつくる企業ではありませんが、多くの製品やサービスの裏側で暮らしと産業を支え続けていることこそが、当社の強みであり価値だと考えています。
環境負荷の低減と、事業成長の両立を目指して
環境負荷の低減や社会課題の解決に向けた取り組みのうち、北区の読者に特に知ってほしい事例を教えてください。取り組みの成果や今後の目標も、可能な範囲でお聞かせください。
当社では、環境負荷の低減と事業成長の両立を重要な経営課題と位置付け、「サステナブル対応製品」の拡充を進めています。サステナブル対応製品の売上高比率は2026年3月期で24.6%となっており、今後も環境対応、リサイクル、バイオ関連製品などの新規開発や新たな事業領域の開拓を通じて、2030年度には同売上高比率50%超を目指しています。
また、温室効果ガス排出量の削減に向けて、再生可能エネルギー電力への段階的な切り替え、省エネルギー活動の推進、屋根の遮熱化、生産設備モーター・変圧器・コンプレッサーの高効率タイプへの更新などにも取り組んでいます。2030年度には、温室効果ガス排出量(Scope1、2)を2013年度対比で50%削減することを目標としています。
北区の皆様には、当社がものづくりを通じて環境負荷低減や社会課題の解決に取り組んでいること、そして暮らしの身近なところで持続可能な未来づくりに貢献していることを知っていただければ幸いです。
田端から王子へ、北区と育んできたつながり
北区との長い関わりと、王子本社の役割について教えてください。
当社は創業当初から現在の北区エリアと深い関わりを持ち続けてきました。1937年には本社および印刷インキ製造部門を巣鴨から田端へ移転し、設備や人員の増強を進めました。その後、2010年に本社所在地を現在の王子へ移し、現在は王子本社が当社グループの経営・管理・情報発信の拠点となっています。
王子本社は、経営、営業、管理、人事、経理、企画・広報、など、会社全体を支える機能が集まる拠点です。製造拠点や営業拠点と連携しながら、事業活動を支え、地域・株主・投資家・取引先・従業員など多様なステークホルダーとの接点を担っています。創業から現在に至るまで、北区は当社にとって事業の歩みと企業文化を形づくってきた大切な地域です。
北区で事業を続ける中で感じる、北区ならではの特徴や魅力を教えてください。立地、人、産業、地域のつながりなど、企業の視点からお聞かせください。
北区の魅力は、都心へのアクセスの良さと、落ち着いた生活環境、歴史や文化、地域のつながりが共存している点だと感じています。王子・田端周辺は交通利便性が高く、企業活動を行ううえでも、従業員が働き続けるうえでも利点のある地域です。
また、王子神社例大祭などの地域行事に参加すると、地域の方々が長く育んできた文化や人のつながりを実感します。企業として事業を続けるだけでなく、地域の一員として関わり、地域の皆様と顔の見える関係を築いていけることも、北区ならではの魅力だと考えています。
東京インキ様から見た「北区らしさ」を一言で表すと、どのような言葉になりますか。社員の皆様に親しまれている場所、風景、飲食店、行事などもあれば教えてください。
一言で表すなら、「歴史と人のつながりが息づく、ものづくりに温かいまち」です。北区は、都心に近い利便性がありながら、地域行事や商店街、自然、文化が身近にあり、人と人との距離が近い地域だと感じています。
社員にとっては、王子・田端周辺の街並みや、飛鳥山周辺の風景、王子神社をはじめとする地域の歴史や行事などが、日常の中で親しまれている存在です。企業としても、そうした地域の魅力に支えられながら事業を続けていると感じています。
地域と交流し、子どもたちにものづくりを伝える
北区で行ってきた地域活動の中から、特に印象に残っている取り組みを教えてください。フードドライブ、子ども向け仕事体験、地域行事への参加など、具体的なエピソードと地域の方々の反応、そこから得た気づきがあればお聞かせください。
印象に残っている取り組みの一つは、王子神社例大祭などの地域行事への参加です。地域の皆様と一緒に活動することで、地域の歴史や文化への理解が深まり、企業として地域に根差していることを改めて実感する機会となっています。
また、北区で開催されている子ども向けの職業体験では、「色で遊ぶ」体験などを通じて、ものづくりの楽しさや色の持つ力を伝えています。普段は目にする機会の少ないBtoBメーカーの仕事を知っていただくことで、子どもたちの学びや将来の可能性につながればと考えています。
このほか、スポGOMI大会などの活動にも参加しました。地域の皆様と協力しながら社会課題の解決に取り組むことで、企業として地域とともに歩むことの大切さを実感しています。こうした活動を通じて、人と人とのつながりが地域の力につながることを改めて学びました。
今後、北区や地域の企業・学校・住民の皆様と、どのような連携を深めたいとお考えですか。また、北区の企業として果たしていきたい役割を教えてください。
今後も北区の企業・学校・地域団体の皆様との連携を深めながら、地域に根差した企業としての役割を果たしていきたいと考えています。子ども向けの職業体験や地域行事への参加、環境美化活動などを継続し、次世代育成や地域活性化への貢献を進めていきたいと思います。
また、当社はBtoBメーカーであるため、一般の方に社名を知っていただく機会は決して多くありません。しかし、私たちの技術や製品は、暮らしや産業のさまざまな場面で活用されています。だからこそ、地域の皆様との交流や情報発信を通じて、「実は身近なところで暮らしを支えている会社」であることを知っていただきたいと考えています。
北区の企業として、地域社会とのつながりを大切にしながら、ものづくりを通じて社会課題の解決に貢献し、地域とともに成長していく存在でありたいと考えています。
自ら学び、挑戦する人を育てる
王子本社にはどのような職種・役割の方が働いていますか。人材育成や働きやすい職場づくりで大切にしていることがあれば教えてください。
王子本社では、営業、管理、企画、広報、人事、経理、情報システムなど、会社全体を支えるさまざまな職種の従業員が働いています。製造拠点や研究開発・技術部門、国内外のグループ会社と連携しながら、事業活動を支えるとともに、経営管理、情報発信、人材・組織づくりなどの機能を担っています。
人材育成では、従業員一人ひとりが自ら考え、学び、挑戦できる環境づくりを大切にしています。階層別研修に加え、キャリア形成支援、評価後のフィードバック、社内公募制度、人材ポートフォリオに基づく配置などを通じて、事業環境の変化に対応できる人材の育成を進めています。
また、行動指針を人事評価に組み込み、結果だけでなく成果につながる行動も重視しています。パーパスやバリューを日々の仕事に結び付けることで、一人ひとりが主体的に力を発揮できる組織づくりを目指しています。働きやすい職場づくりの面では、健康経営、柔軟な働き方、ダイバーシティ推進、公平で透明性の高い制度運用などを通じて、安心して働ける環境整備に取り組んでいます。
新工場を通じて、次の成長に向けた基盤をつくる
今後3〜5年を見据え、東京インキ様が特に力を入れたい挑戦は何でしょうか。その挑戦を通じて、会社や社会をどのように変えていきたいと考えていますか。
当社の中期経営計画「TOKYOink 2027」では、「変革の実践」を掲げ、事業ポートフォリオの変革、高付加価値製品へのシフト、サステナブル対応製品の拡充、生産性向上と人材基盤の強化に取り組んでいます。今後3〜5年の大きな挑戦の一つが、茨城県坂東市における新工場の設立です。
坂東新工場は、持続的成長に向けた生産基盤の再構築を目的としたもので、2028年度中の操業開始を予定しています。主に化成品事業のモビリティ用途製品を製造するとともに、将来的には加工品事業や新規事業への対応も視野に入れています。関東圏の生産拠点集約、自動化・省力化、既存工場の再構築を進めることで、高効率で柔軟性のある生産体制への転換を図っていきます。
こうした挑戦を通じて、東京インキは単に素材や部材を供給するだけでなく、お客様や社会の課題により深く応えられる企業へと進化していきたいと考えています。環境対応、防災・減災、水処理、モビリティ、機能性包装などの領域で当社の技術を活かし、社会価値と企業価値の向上を両立していきます。
北区で暮らす皆様、働く皆様へ
最後に、北区で暮らす方・働く方をはじめ、この記事をご覧になる皆様へメッセージをお願いします。「東京インキのここを知ってほしい」という点があれば、ぜひお聞かせください。
東京インキは、社名に「インキ」とありますが、現在は印刷インキだけでなく、プラスチックの着色・機能付与、包装資材、土木・農業資材など、暮らしや産業のさまざまな場面を支える製品を手がけています。最終製品の中に入っていることが多いため、普段目に留まりにくい会社かもしれませんが、皆様の暮らしの近くで「伝える」「彩る」「守る」役割を担っています。
北区で暮らす方、働く方にとって、東京インキが「地域にある身近なものづくり企業」として少しでも親しみを持っていただける存在になれれば嬉しく思います。これからも、長年培ってきた技術と地域とのつながりを大切にしながら、豊かな未来の実現に貢献してまいります。
