得意だったSNSが、会社をつくるきっかけに
高校時代に始めたSNSでの発信が、企業や個人からの相談につながり、やがて事業になっていく。Kvasir Works株式会社の代表取締役CEO・鶴田一朗様は、自分の得意なことで目の前の課題を解決するところから、事業の歩みを始めました。
現在は成果報酬型広告を中心に、SNS広告運用やインフルエンサーマーケティングを展開。一人で成果を出す仕事から、チームで成果を生み出す会社へ。起業の原点、iU(情報経営イノベーション専門職大学)での学び、Kvasir Adsの開発背景をたどりながら、成長の先に届けたい価値を伺いました。
本記事は、書面でいただいた回答をもとに構成・編集しています。
今回ご回答いただいた方
Kvasir Works株式会社
鶴田 一朗 様
Kvasir Works株式会社 代表取締役CEO
高校2年生の頃から個人で仕事を始め、SNS運用などを通じて企業の支援に取り組む。2023年にKvasir Works株式会社を設立。会社経営と並行してiUで学び、授業で得た知識を自社の事業や組織で実践してきた。個人で成果を出す段階から、組織として継続的に成果を生み出す仕組みづくりへと、経営者としての役割を広げている。
SNSでの試行錯誤が、最初の仕事になった
まず、起業に興味を持ったきっかけを教えてください。
高校時代から、「自分で何かをつくって、それを世の中に届ける」ということに興味がありました。マイプロジェクトやアントレプレナーシップの学びを通じて、ビジネスは特別な人だけがするものではなく、自分でも挑戦できるものだと感じたことが原点です。
最初に自分の武器になったのがSNSでした。Xで情報を発信しながら、「どういう投稿なら見てもらえるのか」「どうすれば人に興味を持ってもらえるのか」を試行錯誤していました。今振り返ると、そこで自然とマーケティングの基礎を学んでいたと思います。
その発信が、どのように仕事につながったのでしょうか。
発信を続けるうちに、SNSを伸ばしたい企業や個人から相談をいただくようになり、それが最初の仕事につながりました。高校2年生の頃から個人で仕事を始め、最初は一人で営業から提案、実務まで行っていました。
最初から広告会社をつくろうと考えていたわけではありません。得意だったSNSで目の前の人の課題を解決していたら、それがサービスになり、事業になっていったという感覚が近いです。
個人での活動から、会社をつくろうと思ったのはなぜですか。
案件が増えるにつれて、一人で仕事を受け続けるのではなく、チームをつくってより大きな価値を提供したいと思うようになりました。そこで2023年に、チャットワーク創業者の山本敏行さんからエンジェル出資を受けて、Kvasir Works株式会社を設立しました。
当時から大切にしていたのは、年齢や会社の規模ではなく「結果で評価される会社をつくる」ということです。若いこと自体を価値にするのではなく、クライアントに成果を返すことで信頼を積み上げていきたいと考えていました。
これまで支えてくれた方々からは、どのような影響を受けましたか。
山本さんとの出会いや支援を通じて、短期的な売上だけでなく、組織をつくることや、会社として大きな目標を持つことを意識するようになりました。出資もいただき、経営者として会社を成長させる責任をより強く感じました。
また、創業当初は信用も実績も今ほどない中で、最初に仕事を任せてくださったクライアントや、一緒に挑戦してくれたメンバー、経営について教えてくださった方々の存在も大きかったです。
そうした経験が、「キッカケをくれたヒトを幸せにする」という社内ミッションにつながっています。会社を大きくすること自体をゴールにするのではなく、成長することで、機会を与えてくださった方々へより大きな価値を返していきたいと考えています。
大学で学び、会社で試す。経営者としての変化
iUでの学びは、会社経営にどう生きていますか。
入学時点ですでに会社を経営していたので、授業で学んだことをそのまま自社で試せることが特徴的でした。経営やマーケティング、テクノロジーについて学んだ翌日に、事業や組織で実践してみる。その結果をまた自分の学びに戻す、というサイクルを繰り返してきました。
iUでは、実際にプロジェクトを立ち上げたり、起業家や経営者の方と接点を持ったりと、実践を前提に学べる環境に大きな影響を受けています。教職員や学生との交流を通じて、自分とは異なる専門性や考え方、新しい技術や価値観に触れられることも大きいですね。
特に「ITを使うこと自体を目的にするのではなく、課題を解決するためにどう活用するか」という考え方は、現在のサービス設計や業務効率化にもつながっています。
会社を経営し、成長させる中で、特に難しかったことは何ですか。
自分一人が頑張れば成立する仕事から、組織として成果を出す会社へ変えていくことでした。個人でSNSを運用していた頃は、自分で考えて実行し、結果を見てすぐに改善できます。
でも会社になると、営業、契約、納期、品質、資金繰りなど、得意なこと以外にも責任を持たなければなりません。規模が大きくなるにつれて、採用や組織づくり、サービス開発について考えることも増えました。自分の頭の中にあるノウハウを共有して、誰が担当しても一定以上の成果を出せる仕組みに変える必要があると感じました。
その仕組みをつくるために、どんな工夫をしてきたのでしょうか。
SNS運用で身につけた「数字を見ながら小さく試し、結果をもとに改善する」という考え方を、会社経営にも応用するようになりました。目標を数字に落とし込み、実行し、結果を確認して、うまくいかなければ改善する。このサイクルを事業や組織にも取り入れています。
一方で、経営を続けるほど、数字だけでは組織は動かないことも学びました。メンバーが何を目指しているのか、会社としてどこへ向かうのかを共有することも重要です。私自身の役割も、プレイヤーとして成果を出すことから、組織として継続的に成果を出せる仕組みをつくることへ変わってきたと感じています。
個人での試行錯誤が、組織づくりにも生きていることが伝わります。
広告主と同じ方向を向き、事業の成果を追う
SNSの経験を出発点に、いまはどのような事業を手がけていますか。
成果報酬型広告を中心に、SNS広告運用やインフルエンサーマーケティングなど、企業の集客・売上拡大を支援しています。主なクライアントは、美容・ヘルスケア・EC・人材・金融・アプリなど、オンラインで集客や申込みを伸ばしたい企業です。
成果報酬型広告は、商品購入やサービスへの申込みなど、あらかじめ設定した成果が発生した際に広告費が発生する仕組みです。SNS広告ではMetaやTikTokなどを活用し、企画やクリエイティブ制作から配信、改善まで行います。インフルエンサー施策では、商材やターゲットに合った方の選定から企画、キャスティング、投稿までを支援しています。
一つの手法に限らず、SNS広告で認知・獲得を行いながら、インフルエンサー施策で商品の理解や信頼を高めるなど、クライアントの課題や目標に合わせて組み合わせています。
なかでも「成果報酬」に着目した理由を教えてください。
広告会社とクライアントの目標を、できるだけ同じ方向に揃えられると考えたからです。商品購入、問い合わせ、予約、会員登録、採用応募など、クライアントにとって価値のある行動を成果地点に設定できます。広告を出すこと自体ではなく、成果を生み出すことにより強くコミットできると考えています。
ただ、案件によって本当に重要な成果は異なります。ECなら購入件数や売上に加えて継続購入率や顧客獲得単価、人材領域なら応募数だけでなく面談・採用につながった割合など、できる限り事業側の数字まで確認します。
クリック数や表示回数だけで評価せず、「広告によって事業の数字がどう変化したのか」を共有しながら、媒体やクリエイティブ、ターゲティングを改善していくことを大切にしています。
実際の案件では、クライアントとどのように役割を分担していますか。
案件によって範囲は異なりますが、基本的には目標やターゲットの整理から、媒体・施策の選定、企画、クリエイティブ制作、配信・運用、効果測定、改善まで対応しています。インフルエンサー施策では、候補者の選定やキャスティングから投稿後の効果検証まで担当することもあります。
例えば美容系の案件なら、商品の特徴やブランドとして守るべき表現、目標CPAなどを共有いただき、当社が媒体の選定や訴求企画、制作、配信・改善を担当します。クライアントには商品・サービスの知見と事業目標をご共有いただき、私たちは、その価値をどうユーザーに届けて成果につなげるかを担う、という分担です。
そうした支援で、手応えを感じた事例はありますか。
成果報酬型広告の案件では、広告主と当社の双方が成果を伸ばしながら成長できた事例があります。当社では、広告費を投じて集客し、商品購入や申込みなど、実際に発生した成果に応じて報酬をいただくケースがあります。広告主は広告費を先に大きく投じるリスクを抑えられ、当社も効率よく多くの成果を生み出すことが利益につながります。
実際の案件で、媒体やクリエイティブ、訴求方法を継続的に検証し、成果の出るパターンを見つけてから配信量を拡大することで、半年間で月間獲得件数を約3倍まで伸ばしたケースがあります。
ただ、獲得数だけを増やせばよいわけではありません。発生した成果の承認率や顧客の質も確認し、広告主にとって事業として継続する価値のある成果かを重視しています。広告主と当社の双方が利益を生み出しながら、長期的に一緒に事業を成長させられる関係を目指しています。
獲得件数の先にある、顧客の事業まで見ているのですね。
信頼を守り、成果を支える仕組みをつくる
成果を伸ばす一方で、広告に関わる人たちの信頼はどう守っていますか。
案件の開始時には、商材やサービスの内容、媒体の規定、表現上の注意事項を確認し、必要に応じてクライアントとクリエイティブや訴求内容を確認しています。特に美容・ヘルスケアなどでは、成果を優先して過度な表現を行わないことを重視しています。
インフルエンサー施策では、広告・PRであることが適切に伝わる表示を前提に、ブランドとの相性や過去の発信内容も確認します。フォロワー数などのデータだけでなく、ファンとの関係性を人の目でも見ています。
成果報酬型広告では成果データや流入状況を確認し、不自然な成果が見られた場合は媒体や広告主と連携して対応します。個人情報は必要以上に取得・共有せず、業務上必要な情報を適切に管理することを基本としています。
成果を管理する仕組みとして、Kvasir Adsはどのような課題から生まれたのですか。
事業を拡大する中で、案件や媒体、成果データの管理を、より効率的かつ正確に行いたいという課題がありました。規模が小さいうちは人の手でも対応できますが、案件や提携する媒体が増えると、成果の計測・確認や案件情報の共有が複雑になります。
そこで、人の手で行っていた業務を仕組み化して、広告主と媒体の双方が利用しやすい環境をつくるために、Kvasir Ads(クヴァシルアズ)をリリースしました。
Kvasir Adsでは、どのようなことができるのでしょうか。
成果報酬型広告に必要な案件管理や成果計測などを、一つの仕組みの中で行えることが特徴です。社内の業務効率化だけにとどまらず、広告主と媒体をつなぎ、成果を正確に可視化する基盤として育てていきたいと考えています。
重視しているのは登録案件数だけではなく、実際にどれだけ成果が生まれ、広告主と媒体の双方に継続して利用していただけるかです。システムを提供すること自体ではなく、そこから生まれる成果をサービスの価値として追っていきたいと思っています。
仕組みやAIの活用が進む中で、人が担う仕事をどう考えていますか。
広告運用の数値集計・分析やレポーティングには、システムやAIを積極的に活用しています。リサーチや情報整理、企画・クリエイティブ制作の補助、業務効率化、開発にもすでに使っていますし、今後は広告データの分析やクリエイティブ改善、社内業務の自動化など、さらに活用範囲を広げたいと考えています。
一方で、「クライアントが本当に実現したいことは何か」「ユーザーはなぜその商品を選ぶのか」といった顧客理解や、そこから生まれる企画・提案、信頼関係の構築は、人が担うべき領域だと考えています。
目指しているのは、ITやAIで人を置き換えることではありません。人が顧客との対話や企画、意思決定に集中できる環境をつくることです。それが「ヒトとITのチカラで働く人たちを応援する」という考え方につながっています。
人が対話や企画に集中するために、テクノロジーを生かしていくわけですね。
成長の先に、顧客と仲間へ返せる価値を広げたい
社外との連携も進めていますが、「キレイレポ」との提携にはどんな手応えがありましたか。
2025年の「キレイレポ」との提携では、自社だけですべてを完結させるのではなく、お互いの顧客基盤やノウハウなどの強みを掛け合わせることで、新しい価値を生み出せることを実感しました。外部企業や金融機関との連携も、成長の大きな転機になっています。
みずほ銀行からの資金調達は、これからの成長にどうつながるのでしょうか。
2026年に、みずほ銀行から事業拡大に向けた資金調達を行いました。成果報酬型広告では当社自身が広告費を先行して投じるため、資金力は獲得件数を拡大する力の一つになります。成果が出る領域へ投資し、そこで生まれた利益を広告や人材、システム、新規事業へ再投資することで、成長速度を高めていきたいと考えています。
提携や資金調達そのものがゴールではありません。いただいた機会や資金をサービス・組織・テクノロジーへ投資して、最終的により大きな成果として顧客へ還元する。その循環をつくることに意味があると思っています。
顧客へ返す価値という意味では、広告以外にも支援を広げていく構想ですか。
広告は、顧客の事業成長につながる一つの入り口だと考えています。新規顧客が増えても、その後の営業体制や採用、業務フロー、システムに課題があれば、事業全体として成長し続けることはできません。
広告やインフルエンサーマーケティングで培った知見を起点に、必要に応じて自社SNS、採用、DX、システム導入、新規事業企画、業務改善など、より広く支援できる体制を目指しています。ただ、すべてを自社だけで提供することが最適だとは思っていません。強みを持つ広告・SNS・マーケティングは自社で深く支援し、それ以外の専門性が必要な領域では、外部の専門家やパートナー企業とも連携していきます。
その先、今後3〜5年ではどのような会社を目指していますか。
広告・SNS・インフルエンサーマーケティングの枠を超えて、企業が継続的に成果を生み出す仕組みを提供できる会社を目指しています。AIやテクノロジーによって広告配信の最適化、データ分析、クリエイティブ制作などの自動化が進む中で、「広告を運用できること」だけでは十分な差別化にならないと考えています。
テクノロジーを活用しながら、顧客の事業そのものを理解して、最終的な成果まで一緒に追える会社でありたいです。Kvasir Adsも、広告主と媒体をつなぎ、成果データを蓄積・活用しながら、より効率的に成果を生み出せるプラットフォームへ成長させていきたいと考えています。
最後に、大きな目標を聞かせてください。
Kvasir Worksを、日本を代表する企業にすることです。それは売上や会社の規模が大きいというだけではなく、新しい事業や価値を生み出し、多くの企業の成長に貢献し、そこで働く人たちにも新しい機会を生み出せる会社になることだと考えています。
その一つの通過点として、上場という目標も掲げています。ただ、上場すること自体がゴールではありません。上場を目指せるだけの事業、組織、社会からの信頼をつくって、その先も成長し続けられる企業になることに意味があると思っています。
創業の原点から、これから目指す会社の姿までお聞かせいただき、ありがとうございました。

機会をくれた人へ価値を返すことが、成長を目指す理由なのですね。