山梨大学発ベンチャーが、
制作と教育を続ける
山梨県甲府市を拠点に、映像制作、オリジナル楽曲、ライブ配信、SNS運用を手がけるマイセンド株式会社。表現を個別に納めるだけでなく、誰に何を伝え、どんな行動につなげたいのかを整理し、企画から発信・運用まで一つの流れとして支援しています。
大学1年次に会社を設立した小川拓人様は、山梨大学発ベンチャーの認定を通じて制作の機会を広げてきました。採用映像で得た信頼がメタバースの案件につながった転機、現場に足を運ぶ理由、教育の価値を確かめながら制作事業で収益をつくる判断と、今も残る収益化の課題について伺いました。
今回ご回答いただいた方
マイセンド株式会社
小川 拓人 様
マイセンド株式会社 代表取締役CEO。大学1年次に会社を設立。映像制作・音楽制作に取り組み、教育学部での障害児教育の学びを制作のアクセシビリティや教育分野の研究に結びつけている。
現在の事業と「世界観」をつくる価値
まず、マイセンドの事業と主な利用場面を教えてください。
マイセンドは、企業や自治体、教育機関などを主な顧客として、映像制作を中心に、オリジナル楽曲の制作、ライブ配信、SNS運用までを一貫して手がけています。企業・商品のPR、採用活動、イベントや講演会の配信、地域の魅力発信、SNSを活用した認知拡大など、利用される場面はさまざまです。
私たちが重視しているのは、単に「きれいな映像をつくること」ではありません。まず、誰に何を伝え、見た人にどのような行動を起こしてほしいのかを整理したうえで、最適な表現や届け方を設計します。
例えば、企業の魅力が十分に伝わっていない場合には、PR映像を制作するだけでなく、映像の印象を高めるオリジナル音楽をつくり、SNS向けの短い動画に展開し、継続的な発信まで支援します。
特に「その映像の世界観に合わせた音楽を作曲して提供する」ことに当社の強みがあります。私は幼少期より音楽演奏、音楽制作が好きで、特にギターはアコースティック、エレキ、ベースなど多数の楽器演奏を趣味としていました。自分は「映像は物語である」「その世界観を表現したい」と強く思っており、映像のクオリティとともに、音楽の質にもこだわっています。
イベントでは、映像をどのように届け、その後に生かしていますか。
また、イベントでは、会場の様子をライブ配信して遠方の人にも届け、その映像を後日ダイジェスト動画やSNSコンテンツとして再活用することもできます。
このように、映像、音楽、配信、SNSを個別の商品として扱うのではなく、一つの目的に向けて組み合わせられることがマイセンドの特徴です。「何を発信すればよいか分からない」「制作会社や配信会社、SNS運用会社へ別々に依頼するのが難しい」「映像をつくっても十分に活用できていない」といった課題に対して、企画から制作、発信、運用までを一つの流れとして支援しています。
「映像と音楽で世界を魅せる」「見えない価値を可視化する」とは、どのようなことを指しますか。
普段、その環境で生活していると当たり前のことでも、それを外から見ることで見え方が180度変わることがあると感じています。私たちはそれを映像などのコンテンツを通して行うことを目指しています。
「映像と音楽で世界を魅せる」とは、もともとそこにある魅力を、映像と音楽によって人の心に届く形へ変えることだと考えています。私たちが新しく価値をつくり出すというよりも、まだ言葉や数字だけでは十分に伝わっていない価値を見つけ、それを感じられる形にすることを目指しています。
私たちが映像化したい「見えない価値」とは、企業や地域が大切にしてきた考え方、働く人の情熱、商品が生まれるまでの背景、技術に込められた工夫、場所の空気感などです。例えば、同じ商品やサービスでも、その背景にいる人や物語を知ることで、受け手の感じ方は大きく変わります。こうした目には見えにくい部分こそ、企業や地域を他と区別する本質的な価値だと考えています。
映像は表情や動き、光、時間の流れを伝えることができ、音楽は言葉では説明しきれない感情や余韻を補うことができます。この二つを組み合わせることで、情報を理解してもらうだけでなく、「共感した」「応援したい」「実際に行ってみたい」と感じてもらえる状態をつくることが、私たちの考える「魅せる」です。
実際に価値が伝わったかどうかは、何で判断していますか。
価値が伝わったかどうかは、再生回数だけでは判断しません。認知拡大が目的であれば視聴数や到達人数、採用であれば応募数や応募者の理解度、販売促進であれば問い合わせや購入へのつながりを確認します。一方で、「自社の魅力を改めて理解できた」「働いている人の思いが伝わった」といった顧客や視聴者の反応も重要な基準です。
制作前に定めた目的に対して、見た人の認識や感情、行動に変化が生まれたとき、「見えない価値を可視化できた」と判断しています。
相談を受けたあと、企画から公開後の運用まで、どのように進めていますか。
案件は、最初の相談で「どのような映像をつくりたいか」を聞くところから始まりますが、私たちはすぐに撮影内容を決めることはしません。まず、「なぜ今つくるのか」「誰に届けたいのか」「見た人に何を感じ、どう行動してほしいのか」を掘り下げます。認知を広げたいのか、採用につなげたいのか、商品への理解を深めたいのか、ブランド力を高めたいのかによって、同じ企業を紹介する映像でも構成や表現、発信方法が変わるためです。
目的と対象者が明確になったら、取材や資料調査を通して、企業や地域が持つ強みを整理します。その中から、説明すべき情報を並べるのではなく、視聴者が自然に関心を持てるストーリーを設計します。誰を主人公にするのか、どの場面を見せるのか、言葉で説明する部分と映像で感じてもらう部分をどう分けるのかを決め、構成や撮影計画に落とし込んでいきます。
例えば、複数の企業を紹介するPR映像を制作した案件では、単に各社の事業内容を同じ形式で並べるだけでは、企業ごとの違いが伝わりにくいという課題がありました。そこで、各社へのヒアリングを通じて、「技術」「働く人」「地域との関係」「将来への考え方」など、それぞれを象徴する要素を見つけ、短い映像の中でも一社ごとの個性が残る構成にしました。一方で、シリーズ全体には映像のトーンや情報量、音の方向性に統一感を持たせ、複数の企業が一つのまとまりとして見えるように設計しました。
その構成を、撮影と編集ではどう形にしていきますか。
撮影では、事前に決めた構成を軸にしながらも、現場で初めて見える表情や動き、音、空気感を大切にしています。編集では、情報を詰め込み過ぎず、視聴者が理解できる流れと感情の変化を優先します。音楽も既存曲を当てはめるだけではなく、必要に応じて映像のテンポや企業の印象に合わせて作曲し、言葉だけでは表せない期待感や信頼感、余韻を補います。
完成した映像は、どのように届け、運用していますか。
完成後は、一本の映像を公開して終わりにするのではなく、掲載する媒体に合わせて再構成します。公式サイトやYouTubeでは全体のストーリーを伝え、SNSでは短く切り出して最初の数秒で興味を持ってもらえる形にします。イベントであればライブ配信と収録を同時に行い、終了後にダイジェストや告知素材として活用することもあります。
各工程で共通する判断基準は、「表現として格好よいか」だけではなく、当初設定した目的に必要な選択かどうかです。撮影、編集、音楽、配信、SNSを一貫して手がけることで、それぞれの工程が分断されず、最初に定めた「なぜ作るのか」を最後の発信・運用まで保てるようにしています。
表現の原点と学生起業
ここから、制作の原点について伺います。映像や音楽に惹かれ、制作を続けるようになったきっかけを教えてください。
原点は、幼少期の環境にあると感じています。音響や映像をはじめ無線や各種電気機器を趣味・業務としていた祖父の影響で、物心つく頃から音響機器や映像機器に囲まれて育ちました。
また、小学生時代の半分をブラジル・サンパウロで過ごしました。言葉も文化も異なる環境で暮らす中、現地のCMに惹きつけられたことを今でも覚えています。言葉が十分に分からない小学生の自分にも、映像と音楽だけで面白さが伝わってきて「表現は言葉や国境を越えられる」と体感した最初の経験でした。
その後、中学校時代の病気による不登校の期間に動画制作を始め、高校時代に迎えたコロナ禍では学校のオンライン文化祭の制作にも携わりました。人と直接会えない状況でも、映像と音楽があれば誰かに何かを届けられる。幼少期に感じた実感が、ここで確信に変わりました。
映像や音楽の技術は、どのように身につけてきたのですか。
ドローン操縦を含む映像制作、音楽制作・作曲の技術は、すべて独学で身につけてきました。作りたいものを一つずつ形にしていく中で、必要な技術を後から追いかける。その繰り返しが、今の仕事の土台になっています。
大学1年次に会社を設立した経緯を教えてください。
きっかけは、大学のキャリア形成系の授業で出会った社長に、自分から「自分は映像を作れるのですが、何かお手伝いできることはありますか」と声をかけたことでした。その方の紹介で、初めての仕事をいただいたのが最初の案件です。
そこから、なぜ法人化を選んだのですか。
法人化を選んだのは、当時「個人事業主」という選択肢の存在を知らず、事業を始めるには法人を設立するしかないと思い込んでいたためです。今振り返ると迷いなく設立できたのは、その無知のおかげだったのかもしれません。
そういう経緯だったのですか。当時は、どのような目標を持っていましたか。
当時の目標は、売上や規模の拡大というより、自分の感性や技術で社会に挑戦してみたいという思いが中心でした。背中を押してくれたのは、最初に声をかけた社長さんです。何者でもなかった学生の申し出を面白がって仕事を任せてくれたことが、すべての始まりになりました。そこから少しずつご縁が広がり、今に至ります。
会社を始めた当初、何が難しかったですか。
一番の難しさは、何もかもが初めての経験だったことです。数ヶ月前まで高校生で、アルバイトの経験すらなかった自分にとって、対価を受け取るという経験そのものが、この会社が最初でした。時間の使い方も、営業の仕方も、価格の付け方も、すべて手探りで進めるしかありませんでした。
最初のカメラは、親に頼み込んで購入資金を借りました。業務として行う映像制作は趣味で行うそれとは違い、画質・音質の担保のためには高価な業務用機材が必須ですが、なんとか自分たちの売上の中で少しずつ揃えていきました。この「借りた機材ではなく、稼いだお金で機材を買う」という経験こそが、趣味の延長ではなく、対価と責任を伴う事業になったのだと感じています。誰かに支払っていただいたお金で、次の仕事のための投資をする。その循環が回り始めたときが、自分の中での転機でした。
なるほど。授業もある中で、仕事との時間はどのようにやりくりしていましたか。
学生生活との両立も簡単ではありませんでした。授業の合間に企画書や見積もりの資料を作り、法人設立の手続きを進め、空いた時間でクライアントとの打ち合わせに向かう。大学生としての生活と、経営者としての責任が、常に隣り合わせにある日々でした。
現在は、どのような制作体制になっていますか。
現在は、TikTokerや大学生、社会人のクリエイターなど、立場も得意分野も異なる方々に制作に関わっていただきながら進めています。一人ではできなかったことが、多様な方の力を借りることで形にできるようになってきました。
大学の学びを事業と創作へ
山梨大学発ベンチャーの認定は、信用や案件にどうつながりましたか。
マイセンドは、山梨大学発ベンチャーとして、学生では初めての認定をいただきました。このことは全国紙から地域メディアまで幅広く取り上げていただき、それ自体が大きな信用につながりました。実際に、この認定がきっかけとなり、一部上場企業様からの案件をいただいた経験もあります。学生という立場だけでは得られなかったであろう信頼を、大学発ベンチャーという肩書きが後押ししてくれたのだと感じています。
認定後、大学との関係はどのように広がりましたか。
大学との関係は、認定を受けて終わりではなく、そこから広がっていきました。大学の広報の方々と関わる中で、学部のプロモーションや大学全体のプロモーション映像の制作に携わらせていただくようになり、授業で使用される教科書の映像コンテンツ制作という機会もいただきました。さらに、授業を通じて知った現代音楽のコンクールに応募し受賞するなど、事業外の実績にも繋がっていきました。
一つの認定が、案件・広報・事業外の実績と、事業の枠を超えて次々と機会を運んできてくれた。これは、大学に籍を置きながら事業を営む「学生ベンチャー」だからこそ得られた広がり方だったと思います。
教育学部で障害児教育を学んだことは、映像制作や伝わり方にどのような視点をもたらしましたか。
教育学部で障害児教育を学んだことは、映像制作における「アクセシビリティ」への意識に直結しています。字幕の入れ方一つ、フォントの選び方一つにも、誰にとって見やすく、伝わりやすいかというユニバーサルデザインの視点を持つようになりました。
この視点は、大学在学中に障害のある方向けの映像コンテンツ制作に携わったことで、より具体的な技術として身についていきました。情報をどう届けるかは、情報を「保障する」という視点で考えるべきだと知ったことは、通常の企業案件においても、見る人・伝える相手の背景を想像する姿勢につながっています。
その学びを、これからどのように発展させようとしていますか。
現在は、この学びを一過性の経験で終わらせず、大学教授と教育系のビジネスとして展開できないか、具体的に検討を進めているところです。
映像とオリジナル音楽を、一つの世界観として設計する際に重視していることを教えてください。
音楽制作において最も重視しているのは、その会社が持つ哲学やコンセプト、世界観に音楽そのものを合わせることです。映像に音楽を「添える」のではなく、映像コンテンツに何が最もふさわしいかを常に意識しながら作曲しています。
上場企業様の社歌をはじめ、イベントの待機音楽、Jリーグチームのプロモーション楽曲まで、その空間・その瞬間に最も合ったイメージの楽曲を制作することで、コンテンツ自体の価値が引き上がると感じています。個人の作曲・電子音響音楽の創作活動で培ってきた「音で空気感をつくる」感覚が、こうした法人案件でも生きています。
そこで得た知見は、どのような領域へ広がっていますか。
現在は、そこで得た知見を発展させ、メタバース空間の音響デザインをはじめ、実際の環境を活かした音響関連プロダクトの開発にも取り組んでいます。
制作実績と継続可能な事業
制作動画100本以上、クライアント50社以上という実績は、現在どうなっていますか。
制作実績については、現時点でも制作動画100本以上、クライアント50社以上という数字に変更はありません。
中でも、事業の転機になった案件を教えてください。
その中で特に転機となったのは、ある大手自動ドアメーカー様との案件です。最初のご依頼は、採用向けの動画を作りたいというシンプルなものでした。社風や働く人の魅力が求職者にうまく伝わっていない、という課題を伺い、社員・社長へのインタビューを通じて、会社の考え方や姿勢が自然と伝わる映像として企画・制作しました。
その映像は、完成後にどのように活用されたのでしょうか。
完成した映像は、同社の公式YouTubeで公開されただけでなく、採用活動の場で実際に活用していただきました。この実績を通じて信頼をいただき、次にご相談いただいたのが、展示会向けのブランド体験型メタバース空間の設計・開発でした。単発の映像制作から始まった関係が、空間そのものをデザインするプロジェクトへと発展していったのです。
映像の次が、メタバース空間だったんですね。
この経験が、マイセンドにとって映像制作にとどまらない「空間デザイン事業」を立ち上げるきっかけになりました。一つの案件でいただいた信頼が、次の案件、そして新しい事業の柱そのものを生み出してくれた、まさに転機となった案件です。
AIを使う領域を、どのように考えていますか。
数字の分析や市場調査といった領域は、AIに任せて良いと考えています。データを扱う作業はAIの方が速く、正確な場合も多い。そこに時間を割く理由はありません。
では、人が担い続けるべき領域は何でしょうか。
一方で、そこにいる人の表情や空気感、その土地・その瞬間にしかない風景の美しさは、どれだけ技術が進歩しても、AIだけでは再現できないものがあると感じています。誰でも映像を作れる時代だからこそ、マイセンドが大切にしているのは、まさにこの「その場にしかない何か」を捉える感性です。
そのために大事にしているのが、わざわざ現地までカメラを持って足を運び、直接お話を伺ってから撮影するという、ごく当たり前のことです。テンプレートや素材映像では拾えない、その人・その場所ならではの空気や思いは、実際に話を聞き、同じ場に立たなければ撮ることができません。この手間こそが、顧客理解の土台であり、マイセンドにしか作れない価値の源泉だと考えています。
企画やリサーチの一部にはAIやテクノロジーを積極的に取り入れながらも、現場に足を運び、話を聞き、被写体と向き合う。この工程だけは、これからも人が担い続ける領域だと考えています。
続いて、公開後の運用について伺います。ライブ配信やSNS運用まで担うことで、顧客との関係や提供する価値はどう変わりましたか。
大切にしているのは、目的を明確にすることから手段を考えるという順番です。「映像を作りたい」という要望をそのまま受けるのではなく、なぜ作りたいのか、何を大切にしたいのかを、さまざまな角度からヒアリングします。そのうえで、映像なのか、SNS運用なのか、あるいはその両方なのか、最も目的に合うと思われる手段をご提案します。
ライブ配信やSNS運用まで担うようになったことで、この関係性は大きく変わりました。以前のような「納品して終わり」の映像制作とは違い、実際の反応を見ながらやり方を修正し、継続的に伴走する関係になったのです。一度提案して終わりではなく、運用の中で見えてきた新しい展開やアイデアを都度ご提案し、より良いコンテンツへとブラッシュアップし続けています。
その成果を、数字とブランドの両面からどう見ていますか。
もちろん、再生数などの数字は指標として見ています。しかし、それだけでは判断しません。アナリティクスやSNS上の反応を通じて、そのブランドのイメージを傷つけていないか、良い方向のプロモーションになっているかを見極めることを重視しています。加えて、そのメディア・プラットフォームごとの流行の移り変わりも踏まえたうえで、提案・制作を行っています。
教育分野の取り組みに話を戻します。教育での問題意識と、映像・音楽・オンライン空間の制作力は、どのようにつながっていますか。
この問題意識と制作力は、すでに具体的な形で繋がり始めています。学生時代に取り組んでいた研究をベースに、発達に特性のある子どもたちが安心して過ごせるMinecraft上の居場所づくりに取り組んでいるほか、Unityを使った遊べるオンライン空間や、特別支援教育のための動画教材の制作など、映像・音楽・オンライン空間制作の技術を教育の現場に応用する取り組みを続けています。
現在は、大学の教授と連携しながら、アセスメントから仮説、そして最適な学習アプリの活用へとつなげる新しいシステムの共同研究も進めています。
これらを、将来どのような形へ育てたいと考えていますか。
これらの取り組みを将来的にサービスとして展開していく可能性も視野に入れていますが、事業化を急ぐことよりも、社会にとって最も価値のある形は何かを見極めることを優先したいと考えています。大学での研究と、マイセンドが持つ映像・音楽・ライブ配信・空間制作の力を、どう組み合わせれば本当に子どもたちのためになるのか。その問いを持ちながら、これからも大学との連携を続けていきたいと思っています。
教育への展開と大学発企業としてのこれから
大学での研究やつながりを起点にした取り組みを続ける中で、最も大きかった困難は何ですか。
一番大きな困難は、収益化でした。大学発ベンチャーとしての認定はいただいているものの、教育分野での取り組みそのものからは、これまで大きな収益を生み出せていません。大学での研究や人的なつながりから生まれた事業は、始める段階では「意義があるはず」という前提で動いてしまいがちですが、実際に形にしていく中で、本当にニーズがあるのか、そのサービスに価値があるのかを、都度立ち止まって見極める必要がありました。
取り組みを続けるために、どのような工夫をしていますか。
そこで行き着いたのが、教育分野の取り組みを無理に収益化しようとせず、まずは信頼を積み重ね、価値を確かめる場として位置づけるという判断です。一方で、映像制作やSNS運用など、明確に対価をいただける事業でしっかりと収益を作る。この二つをはっきり分けて考えられるようになったことが、大学発の事業を今日まで継続させてこられた理由だと思います。
ただし、教育分野での収益化は、今も解決できていない課題です。社会的な価値を損なわずに、どう事業として持続可能な形にしていくか。これは、これからのマイセンドにとって大きなテーマの一つだと考えています。
最後に、今後の展望を伺います。今後3〜5年で、マイセンドをどのような会社にしていきたいですか。
3〜5年で目指しているのは、大きな数字を掲げることよりも、今の事業を着実に伸ばしていくことです。
事業の柱としては、映像制作・SNS運用に加えて、空間デザインという領域に挑戦していきたいと考えています。これはVRやメタバースに限った話ではなく、実際の空間演出や体験設計まで含めた、より広い意味での「空間」を対象にした新しい挑戦です。
AI活用については、社内のコスト削減や業務のスケールのためだけでなく、それ自体を新しい収益源にすることを目指しています。コスト削減・スケール・新収益源という3つの方向性を同時に進めていきたいと考えています。
まだ答えの出ていない教育分野の課題には、どう向き合いますか。
一方で、教育分野の収益化は、今もまだ答えの出ていない課題です。この課題に向き合うためには、自分たちだけでは限界があり、大学をはじめとした教育機関との連携が今後さらに重要になると考えています。
映像・音楽・AI・教育という、一見バラバラに見える領域を一つの会社の中でつなぎ合わせ、これまでにない価値を生み出していく。それが、これから3〜5年でマイセンドが目指す姿です。
小川様、貴重なお話をありがとうございました。

オリジナル音楽も制作されるとのことですが、音楽にはどのようなこだわりがありますか。